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バイオクレン ファーストケア CT 開発秘話

ファーストケアCT 神戸研究部 部長 斉藤 文郎

煮沸に匹敵する消毒効果のヨウ素タイプ。新たなミッションはケア手順の確実性を高めること。
そもそもこの「ファーストケアCT」の原点ともいえる、ポビドンヨードのケア用品の開発チームが立ち上がったのは1993年のことでした。ソフト用1本タイプ(MPS)が国内で初めて発売され、煮沸消毒剤に代わってコールド消毒剤の普及が進んでいたのですが、MPSは消毒・洗浄・すすぎ・保存が1本でできる反面、消毒液がそのまま目に入るため効果が弱い。そのため、レンズをこすり洗いすることでレンズ表面から雑菌を減らす操作が必須で、使う人のやり方、正確性、技術によって、消毒の効果がバラバラになってしまう。今後コンタクトレンズユーザーが増えれば、MPSをきちんと使えない人も出てきて目の感染症の恐れも拡大していくのではないかという危惧がありました。そこで、煮沸消毒に匹敵する、レンズを液につけるだけで充分な消毒効果のある製品を目指し、世界初となるヨウ素タイプのコールド消毒剤の開発が始まったのです。
まさに試行錯誤の末、ヨウ素タイプの第1弾「クレンサイド」の発売に至ったのは、開発着手から実に8年後の2001年。ただ、当時の技術ではヨウ素を顆粒、中和剤をコーティング錠剤とし、別々に包装せざるをえず、使用する際に2つの包装を開けて顆粒と錠剤を溶解・すすぎ液に溶かすというプロセスが必要でした。その後、「ファーストケア」の開発で顆粒と錠剤の一体化包装を実現したものの、ここでもまだ顆粒をこぼしたり、錠剤の入れ忘れの可能性が残されていました。
「ファーストケアCT」の開発で最大のテーマとしたのは、まさにここ。“ケアの確実性を上げ、安全性を高める”ため剤型を、中和錠の周りを消毒剤で包んだ有核錠としました。一つの錠剤を溶解・すすぎ液に溶かすだけで、誰が使っても、高い消毒力を発揮するケア用品を創ることだったのです。

まったく前例のない開発だからこそ一錠一錠、トライ&エラーの繰り返し。

まったく前例のない開発だからこそ一錠一錠、トライ&エラーの繰り返し。
実はこの有核錠の構想は10年以上前から持ち続けていたものでした。しかし、それを具現化させるための処方設計もできず、製造技術もなく、本格的な開発に着手できずにいました。しかし、「クレンサイド」から改良を重ね、処方設計は「できる」という確信を得られるようになったのです。
とはいえ、有核錠を大量に製造することに対して正直どこから手を付けていいものか、悩んでいました。ヨウ素を錠剤にするためには一旦顆粒状態にする必要があり、その当時持っていた技術では顆粒を作ることさえできなかったのです。しかし、フットワークの軽い研究員が色々な製造機械メーカーを探し、顆粒や錠剤の試作を行ったことをきっかけに、製造技術についても道が開けました。 研究室で実験するために有核錠を一錠ずつ手で打つ機械も手に入れました。でも、本当に大変だったのはここからでした。顆粒が固まりやすいと、打錠機械のいわゆる「杵」と「臼」に粒子が付着してしまう。かといって柔らかすぎると錠剤としての安定性が損なわれる。前例のないことなのでもちろん教科書などなく、机上の計算だけで導き出せるものでもない。とにかく試作を行って検証するしかなかったのです。一錠分の顆粒を丹念に図り取り、打錠機にセットして一錠一錠ひたすら打ちこむ。この作業を1日8時間掛けて約200錠。根気のいる作業の連続でした。でも振り返ってみると、このトライ&エラーを繰り返しているときが一番楽しかったですね。今まで誰もやっていない開発を行っている、そしてこの過程が多くの人のケアの利便性、安全性につながるんだと考えると、研究者として胸の高まりを感じずにはいられなかったんです。

「ファーストケアCT」で実現したヨウ素タイプの理想の形。

開発から1年で完成。承認もクリアし、無事にミッション終了。
そしてついに「これ!」という形が見つかったときの快感。考えただけで今でも昨日のことのようによみがえってきます。こうして開発を始めてから約半年で、有核錠が完成したのです。
私たちの役割はここで終わるのではなく、次に待ち構えていたのは、厚労省から販売の承認を得るためのデータを揃えること。研究所内で培養しているアカントアメーバなどを使って有効性を証明する試験や製造後3年間の品質を保証するため、安定性を確認する作業を重ね、豊岡の研究所で飼育しているウサギを使って安全性も検証。こちらも地道な作業でした。ただ、ヨウ素を使ったソフトコンタクトレンズ用消毒剤は当時存在していなかったため、厚生労働省から様々なデータを要求され、約4年もの歳月を要して臨床試験等を繰り返す経緯があったので、「ファーストケアCT」は1年後には承認を得ることが出来ました。ここでようやく、私たちのミッションは終了となったのです。
「ファーストケアCT」で実現したヨウ素タイプの理想の形。
ヨウ素の消毒効果は、「クレンサイド」時代から非常に強力で、国民生活センターが2009年12月に公表した「ソフトコンタクトレンズ用消毒剤のアカントアメーバに対する消毒性能」の調査でも、他の消毒剤と比べて最も効果が高いという結果を得ています。つまり、残された課題は、どなたにお使いいただいても正しく確実にケアを実践できる形にすることでした。その意味では、「ファーストケアCT」はまさに、固形剤として行きつくところまで行きついた最終形。ヨウ素タイプで間違いのないケアをするには、この有核錠が最適だと胸を張って言うことができます。